015 ローストビーフと相性ぴったり

Copyright:モーセルヴェ 伊藤 歩

明けましておめでとうございます。
今年はとうもろこしの出来が良かったせいで例年よりフォアグラが美味しいと聞きましたが、皆さん年末は何を召し上がりましたか?
今年も季節に合わせたワインを試飲していきますので、宜しくお願いいたします。

お正月の肉料理といえばローストビーフ、ローストビーフに合うワインはボルドー! ということでオー メドック(Haut Medoc)のワインをご紹介。

紙上で何度かボルドーを取り上げ、ドルドーニュ河右岸のメルロー種、ジロンド河左岸のカベルネ種の違いについてお話しましたが、今回はさらに突っ込んでメドック地区のカベルネ種と料理の相性についてお話しましょう。

ジロンド河が海に合流する手前一帯がメドック(Medoc)地区ですが、細かく言うと上流側のオー メドック、より海に近いメドックの2つの地区に分かれます。
特にオー メドック地区は1級シャトーが集中するだけでなく、一般的にメドック地区よりも質の高いワインが産出されるようです。

この地区での主要品種、カベルネ種(カベルネ ソーヴィニヨン、カベルネ フラン)はカシス、ブラックベリーの香りに独特の植物香があり、とくにオー メドックは森林香、タバコ、鉛筆などが典型的な香りに挙げられます。
タンニンが濃く、飲み口がソリッドで、割りととっつきにくい硬派なワインと言えます。

カベルネ ソーヴィニヨンは世界で最も使用されている赤ワインの品種ですが、ニューワールドとの大きな違いは爽快感。
大西洋が近いせいでしょうか、ミネラル分にも繋がる潮の香り、まるで海のそばの松の森で深呼吸しているような爽やかさがタニックで、重くなりがちなワインを飽きのこないものに仕立てます。

さて、料理とワインの相性をみる時に肉や魚そのものとの相性も然りですが、意外に忘れがちなのが付け合せ。
付け合せの野菜、特に根菜(かぶ、にんじん、大根)やいんげんなどとワインの相性は難しいのですが、こんな時に手を挙げるのがオー メドックのワイン。
適度な植物香が野菜の青さにマッチして、野菜大好きのお母さんも大満足。

しかし、野菜にオリーヴ オイルを使っている場合はボルドーはアウト!
なぜかボルドーの植物香が強調されて、果実の香りが殺されます。
したがって、調理はバターでしましょう。
エッ? 体重? コレステロール? 気にしない、気にしない(笑)。

それでは早速Haut Medoc Chateau de Braude 2000の試飲。
黒味がかった赤紫にふちがほんのりオレンジ(赤ワインは年を経ることによって、よりオレンジがかって来ます)。
香りはオー メドックらしい爽やかな森林香、鉛筆の芯、ミント、潮の香りにカシス、ブラックベリーのリキュール、黒胡椒の香りがアクセントを添え、まとまりがあって上品な香り。
口に含むと、カシス、ブラックベリーのリキュール、またまた鉛筆の芯、タバコ、ミントチョコレート、最初から最後まで続く森林香と上品な酸が飲み終わった後もついついもう1杯と手が伸びます。

こういったベーシックなオー メドックと、愛想のないローストビーフ(日本で作るなら和牛ではなくオージービーフ)、付け合せはじゃがいもでもいんげんのソテーでも。
味覚の相性だけでなく、料理とワインのテンションもぴったりです。
お節つながりなら黒豆とも美味しそう。

しかしながらこのワイン、1年前に試飲した時は果実が沈んでいてタンニンばかり目立つ、私にとってだめワインだったのが、先日飲んだら、あら、美味しい。
果実が上がってタンニンと手を結んでいました。
ワインは動くをあらためて実感。
1度だめだからってあきらめちゃだめだったのね、すみませんとお詫びのつもりで登場させてみました。
気になる価格は17ユーロです。