008 フォアグラと相性抜群
Copyright:モーセルヴェ 伊藤 歩
私事ですが、現在妊娠9か月。
そう、ワインが飲めません。
でも、うっかり立ち寄ったカーヴで大好きだったけど、もうどこにも見つからなかったこのワインを見つけて1口だけ…。
娘よ、駄目な母ですまん。
【アルザスのワイン】
ドイツとの国境に近いアルザス地方、ストラスブール(Strasbourg)からミュルーズ(Mulhouse)まで170kmの細長いワイン生産地です。
アルザス地方の気候の大きな特徴は降水量が極端に少なく、夏と冬の温度差が激しいことです。
このおかげでぶどうの熟する速度が遅く、アルザス特有の香りの高さと上品さが生まれます。
【アルザスワインとは】
細かく話すと頭が破裂しそうに複雑なアルザスワインですが、今回は簡単にアルザスの品種についてご説明しましょう。
品種といえば、フランスのブルゴーニュ以北の地方は単一品種でワインが作られるのが主ですが、アルザスは単一品種の使用だけでなく、エチケットに品種名を記載して販売されることが多いのが大きな特徴です。
アルザスといえば白ワインですが、品種は7つ。
【高級品種4種】
Grands Crus、Vendanges taridves(遅摘み、中甘、甘口)、Selection de Grains Nobles(選り摘み、甘口)には高級品種のみ単一で使用されます。
長熟に耐えられるのもこの4種(特にRiesling、Pinot Gris)。
- Riesling
デリケートな果実の香りとバラなどの花の香り、ミネラル分が高く、古いものはガソリンの香りも。 - Gewurztraminer
強烈なライチなどの南国フルーツ、スパイスの香り。辛口の場合でも糖度がわりと高いことが多い。 - Tokay Pinot Gris
高級品種の中で一番糖度が高い。オレンジピールや蜂蜜の香り。 - Muscat
いわゆるマスカットの香り、ほかの地方が甘口なのに対してアルザスはこの品種は辛口が多い。
【それ以外の3品種】
- Sylvaner
香り口当たりが柔らかく日本酒のような口当たり。アペリティフやカニのカクテルなどと。 - Pinot Blanc
こちらも丸みがあり、心地よい爽快感がある軽いワイン。 - Chasselas
しゃっきりした酸があり、さらりとしたのど越しのいいワイン。
主に単一品種でワインが作られますが、エチケットにEdelzwickerと記載してある場合は以上の品種の混合です。
赤はPinot Noirの1種類のみ。
ブルゴーニュのPinot Noirに比べて赤がロゼのように薄く酸が強いものが多いので冷やして飲まれることをおすすめします。
【バランスのいい2000年のワイン】
さてそろそろ今月のワインの紹介に入りましょう。
アルザスの自然なワインの作り手の大御所Gerard SchuellerのEdelzwicker Cuvee Particuliere 2000。
現在醸造等を仕切っているのは息子さんのBrunoさんですが、お父さんのGerardさんも健在。
このお父さんがまるでご長寿早押しクイズ様な受け答えの忘れられない名物お父さんです。
さて、バランスのいい2000年のこのワインですが、特筆すべきはEdelzwickerと明記してあっても100% Gewurztraminerなのです。
これには深い訳があるのですが、今回は割愛して肝心の味わいの説明。
香りはライチ、みかんの皮、乾燥マンゴーの果実の香りにほんのりばらの香りのようなコスメティックな香りも感じられます。
口に含めばとろりとした柔らかい甘みに、きりっとした苦みがアクセント。
スパイスの香り、焼き栗の香りもほんわり出てきて、飲む度にニュアンスがかわります。
このワインで気をつけたいのが抜栓は2日くらい前に! うまみと香りがのびます。
あわせる料理は、フォワグラ! ポワレもいいですし、ミ キュイ(mi-cuit:半分火を通した)もたまりません。
これにパンデピスを軽くローストしたものを添えればばっちり。
フォワグラには甘口ワインを合わせるのが一般的ですが、私はこれくらい締まりと香りにパンチのある中甘口のワインの方が好きです。
飲みきれなくても明日のアペリティフするか、マンステール等のチーズと合わせてもいいし、なかなか経済的なワインでもあるようです。