501 いい加減で、いい具合
数年前、メトロ(地下鉄)に乗ろうと、とある駅のホームに降りた時のこと…。
ホームのところどころ、車両の乗降口が停まるあたりに線が引いてあって、「電車が停まったら、降りる人を待ってから、順番に乗りましょう」と書いてありました。
そしてそれを見て、「おっ! パリでもいよいよ整列乗車が始まるな」と思いました。
ところが現在では、ホームに引いてあった線もなくなり、また、「電車が停まったら…」の文字もありません…。
そう、ここパリには、整列乗車の習慣はないのです。
ホームに電車が入って来ると、人々はおもむろに乗降口に集まり、そして乗り込んでいきます。
またバスも然り。
バス停にバスが停まると、人々は何となく乗車口に集まって、乗り込みます。
しかしそれでも、あまり問題はないようです。
他人を押しのけ、我先にと乗り込む人の姿は見かけませんし、また、空いている席を目がけて走る人の姿もありません。
そしてそんな様子を見るたびに、「いい加減」なことが多いと感じるこの国だけど、「いい具合」に機能していることもあるのだな~と思います。
さらに、フランスの公共交通機関を利用する時に、「いいな~」と思うこともあります。
それは、バスに乗る時のこと。
バスの1番前にある乗車口から乗り込んだお客さんの多くが、目の前にいる運転手さんに向って「ボンジュール!」と挨拶をすることです。
また先日、南仏の海辺の小さな町に行った時には、ちょっと驚くことがありました。
バスに乗っていたお客さんが、車両の中程にある降車口から降りる際に、運転手さんに向って「メルシー!」と大声で叫んでいたからです。
文字にしてしまえば、たったこれだけのことですが、僕はこの国の、こういうところが良いように思うのです。