489 南仏プロヴァンスの旅を終えて

先日、短い夏休みをいただいて、南仏プロヴァンスにラベンダーを見に行ってきました。
今日は、この旅で思ったことを、3つお話したいと思います。

1つめは、南仏プロヴァンスのラベンダーについてです。

南仏プロヴァンスと言えば「まぶしいほどの日の光と、たくさんの花が咲き乱れる、緑豊かな大地…」というイメージ。
そしてラベンダーは、この土地を代表する花の1つです。

なお、旅に出る前には「地平線まで続く青紫色の海のような、一面のラベンダー畑が見てみたい」と思っていました。

しかし実際に出かけてみると、ラベンダーの他にも小麦やぶどう、オリーブやマスタードなどの畑があり、なかなか「地平線まで続く…」とはいかないことが分かりました。

それでも、視界のあちらこちらにラベンダー畑が広がっているので、「この風景を空の高いところから眺めたら、青紫色の生地をたくさん使ったパッチワークのようできれいだろうな…」なんて想像しながら楽しみました。

さらに、ラベンダー畑は、思っていた以上に素朴なものでした。
「名所 ○○の丘」とか「○○観光農園」なんていう看板が立っているわけではなく、ただただ、農作物としてのラベンダーがあちらの丘やこちらの丘に植えられているだけです。
そしてその中を、南仏の初夏の風が静かに渡っていくだけです。

2つめは、アヴィニヨンにあるレストラン「ラ トゥレイユ(La Treille)」についてです。

ここは、オーベルジュ(auberge)と呼ばれる宿泊施設を備えたレストランなのですが、食事だけでも利用することができます。

また、広々としたお庭にはテーブル席が設けられ、南仏の明るい日差しの中で、ゆったりとした時の流れとともに、美味しいお料理を楽しむことができます。

そしてそこにあるのは、「いつの日か、南仏プロヴァンスを旅してみたい…」という思いを、まさに現実のものにした瞬間のような、理想とも言えるような光景…。
もし、僕が旅行ガイドなら、是非、皆さまをお連れしたい場所です。

3つめは、シャンブル ドット(Chambre d'Hote)について。

シャンブル ドットとは、空いているお部屋を客室に改装し、旅行者に提供してくれる、フランスの民宿のこと。

いままでにも何度かシャンブル ドットには泊ったことがありますが、今回は、とても思い出深いものになりました。

泊めていただいたのは、ソー(Sault)の村の南側、ヴォークリューズ山地(monts de Vaucluse)にある、山奥の一軒家。
1番近いサン サトゥルマン レ ザプト(Saint Saturnin les Apt)村からでも、山道を12キロほど走ります。

さらに、その山道から脇道(農道)に入って、ラベンダー畑の中を進むこと約3キロ。
宿の周りには、ラベンダー畑と深い森があるだけです。

なお、そんな山奥にある民宿ですから、正直、お料理には期待していませんでした…。

ところが、出されたお料理をいただいて本当にビックリ!
一見、素朴なお料理に見えるのですが、実は、1皿1皿がとても丁寧に作られていて、ものすごく美味しかったのです。

聞いたれば、宿のご主人はその昔、ベルギーにある2つ星レストランでシェフをなさっていたとのこと。

食後、宿のご主人に「本当に美味しいお料理でした。三ツ星です!」と伝えたら、「ワッハッハ!」と大きな声で笑いながら、「ありがとう。でもここはもっと凄いところなんだよ。ほら見てごらん、外は満天の星なんだから!」と…(なんてステキなお言葉)。

すべてお庭で採れたというハーブで入れた熱々のお茶(これが本物のテ ジャルダン プロヴァンシャル(The Jardin Provencal:プロヴァンスの庭のお茶))をいただきながら、南仏プロヴァンスの夜は静かに更けていったのでした…。

ラ ターブル デュ ボナー(La Table du Bonheur)