458 パリの地下は穴だらけ
パリの建物、例えばノートルダム寺院やサンジャック塔などは石で作られていますが、その石はどこから持ってきたと思いますか?
私はてっきり、どこか田舎から持ってきたものだと思っていたのですが、実は、パリの地下から掘り出した石だったのです!
先日、パリの地下探検ツアーに参加しましたので、今日はその時のお話をお伝えしたいと思います。
私が見学したのは、一般には公開されていない、パリ14区の地下25mにある採石場跡。
ここパリには、地上から深さ20m~25mの辺りに砂が固まって出来た砂岩層があり、古くはローマ時代から、また中世や近代に至るまで、ここから建物に使う石を切り出していたのだそうです。
なお、全長300kmにも及ぶ迷路のような地下道を案内してくださったのは、フランス人の作曲家であり、またパリの歴史にも詳しいルノー ガニュー(Renaud GAGNEUX)さん。
採石作業に関するお話のほか、地下に貯蔵されていたワインにまつわるお話や、地下道を所有していた修道院のお話、さらにはパリの地層や歴史についても伺いました。
また、お話を伺いながら地下道をグルグルと歩き廻っているうちに、「ここで1人取り残されたら、地上に戻ることはできないな…」と、怖くなったりもしました。
なお、石を切り出さなくなった後の地下空間は、いろいろな目的で使用されたのだとか。
ある時は隠れ家や核シェルターとして、またある時は牢屋として、そしてまたある時は学生達の遊び場(?)として。
さらにフランスには、シャンピニオン ド パリ(champignon de Paris)と呼ばれる肉厚のマッシュルームがありますが、このきのこが最初に栽培されたのも、この地下採石場跡だったとのこと。
しかし、無計画かつ広い範囲で採石してしまったため、近年になってシエル トンベ(ciel Tombe:落っこちた空)と呼ばれる落盤や地盤沈下が起きているそうです。
また、それらの事故を防ぐための補強工事の様子も見せていただきましたが、大きな石を積み木のように積んで柱を作り、それで天井を支えていたり、電柱を細くしたようなポールを立てて支えていたりと、地震の多い日本から来た私にとっては、ちょっと(かなり?)不安を感じるようなものでした…。
さらに、この地下採石場跡に限らず、実はパリの地下は穴のあいたチーズに例えられるほど穴だらけなのだとか。
大まかに言うと…
- 地上~地下10mの辺りまでは下水道や地下室、地下駐車場などに
- 地下10m~15mの辺りはメトロ(地下鉄)に
- 地下15m~20mの辺りは高速郊外鉄道(RER)に
- そして地下20m~25mの辺りが今回見学した採石場に(主に左岸)
…なっているそうです。
パリの人々は、穴だらけの土地の上に石を積んで建物を作り、住んでいるわけですね…。
こんなことが可能なのだということに、とっても驚いた1日でした。
●地下採石場跡を管理している協会のWebサイト