446 まるで映画の世界

日曜日の朝、凪さんをベビーカーに乗せて、リュクサンブール公園へと散歩に出かけた時のこと。

今日は決して寒くはないのですが、お天気は生憎の雨模様…。
と言っても、霧雨というのか、小糠雨というのか、とても細かな雨粒が無数に空気中を漂っているような雨です。

この季節、曇りや雨の日が続くここパリでは、こんな雨も多いもの。
でも、こんな時にはパリの街がどこかしっとりと落ち着いて、これはこれで、なかなか風情があるものです。

公園の向かいにあるマクドナルドの前まで来た時のこと。
まだ朝の早い時間であるせいか(いわゆる、朝マックの時間帯…)、ガラス越しに見える店内には、数える程しかお客さんがいませんでした。

そしてその中に、窓際のカウンターに座って、1人コーヒーを飲む女性の姿が。
恐らく、誰が見ても美人と言いそうなその顔立ちに、僕も目を奪われてしまいました…。

そして、次の瞬間に思い出したのは、スザンヌ ベガ(Suzanne VEGA)が歌ったトムズ ダイナー(Tom's Diner)という曲。

「霧雨の降る日曜の朝に、美しい女性が1人、静かにマックでコーヒーを飲んでいるなんて、何かあったのかな…」なんて、まったくもって余計な心配をしつつも、その、何とも言えず美しい光景は、まるで映画のワンシーンのようでした。

続いては、マクドナルドの前を通り過ぎ、横断歩道を渡ってリュクサンブール公園へと入った時のこと。

20歳くらいの男の子と女の子が(もっと若いかも…)、手をつなぎながらこちらに向って歩いて来るのが見えました。

朝もやのような霧雨の中を、本当に楽しそうに(嬉しそうに)歩いてくる2人の姿はとても初々しく、初恋の、あの甘酸っぱさを思い出させるような感じです(本当に甘酸っぱいかどうかは知りませんが…)。

さらに、僕には聞き取ることのできない美しく流れるようなフランス語の会話も相まって、それはまるで、ちょっと昔のフランス映画に出てくる恋人達のよう…。
どこからともなく、美しいBGMが聞こえてくるような感じすら覚えました。

ここパリは、街並みや公園を見ながらお散歩するだけでも美しいと感じることがあるけれど、そこに住む人々が織り成すこのような光景も、その美しさの一部なのだな~と、あらためて感じた朝でした。