425 Non(ノン)と言えない
フランス語の絵本を、凪さんに読んで聞かせようとした時のことです。
ページをめくって、びっくりしました。
それは、少しショッキングな内容…。
実は、同じ絵本の日本語版を以前から持っていて、いままでに何度も読んでいたので、その内容は十分に知っているものでした。
ところが、同じ絵本のフランス語版には、日本語版にはない新たな事実(?)が書かれていたのです。
その絵本は、エリック カールさんというアメリカの作家がお書きになった、「ね、ぼくのともだちになって!」というもの。
英語版のタイトルは、「Do You Want to Be My Friend(ぼくの友達にならない)?」。
フランス語版のタイトルは、「La souris qui cherche un ami(友達を探すネズミ)」です。
1匹のネズミが友達を求めて、馬やワニ、ライオンなどに出会うたびに、「ね、ぼくのともだちになって!」と声をかけていきます。
なお、日本語版にはどのページにも「ね、ぼくのともだちになって!」というセリフしか記されてはいません。
「ページをめくるたびに新しい友達が増えていって、最後には女の子のネズミとも友達になる…」みたいな内容だと思っていた私ですが、フランス語版を読んで、大きな勘違いをしていたことに気がつきました。
フランス語版では「ね、ぼくのともだちになって!」と動物たちに声をかけるたびに…
- 「いいや、結構(Non,merci)」
- 「やめとくよ(Je n'y tiens pas)」
- 「今日はまだいいや(Pas aujourd'hui)」
- 「すみません、残念ですが…(Non,je regrette)」
- 「またの機会に(Une autre fois, peut-etre)」
- 「結構です(Sans facon!)」
- 「やーだよ!(Non, non et non!)」
- 「絶対イヤだ(Certainement pas)」
- 「論外だ(Pas question!)」
- 「なりたくないなぁ(Je n'en ai pas envie)」
…と、ことごとく断られているのです。
しかし、そんなふうに断られても…
「たいしたことないさ、大丈夫(Ca ne fait rien)」
…と、ネズミは次の友達を探しに行きます。
そして最後に、友達(女の子のネズミ)を見つけることができるのです。
「ともだちになって!」と言われて、むげに断るのは教育上よくないという配慮からか、日本語版では声をかけたれた動物たちの返事がすべて削除されたのかも知れません(何も返事がないというのも寂しい気がしますが…)。
逆にフランス語版では、嫌なものは嫌と言うこと、また、断られてもあきらめない強さ、そして、あきらめなければ願いが叶うということを、子供達に教えているのでしょうか…。
以前、フランス人のご家族と他愛もないおしゃべりをしていた時のこと…
「日本人って、Non(ノン)と言えないって本当?」
…と訊ねられたことがありました。
同じ絵本の、フランス語版と日本語版との翻訳の違いを見比べた今、子供の頃から育てられ方が違うから、それも仕方がないのかも知れないな~と、思いました。