394 ソムリエという仕事
ソムリエ(sommelier)という言葉を辞書で引いてみると、「ワインに関する専門的知識をもち、レストランなどで客の相談に応じてワインを選ぶ手助けをする給仕人」と記されています。
今日は、パリやボルドー、アルザスなど、フランス各地のレストランで出合ったソムリエのエピソードをご紹介したいと思います。
1つめは、アルザス地方の小さな村にあるレストランでのこと。
アルザスには、用いるぶどうの品種によって7種類のワインがあるそうですが、僕はその中から3種類を選び、飲み比べてみたいと思っていました。
そして、一般的に「○○の品種のぶどうから作られたワインは甘口で…」とか、「××の品種のぶどうから作られたワインはさっぱりした口当たり…」などと言いますので、注文した3種類のワインをどの順番で飲んだら良いのか、自分なりに頭の中で考えていました。
ところが、お料理とともに出されたワインの順番は、僕の予想とはまったく異なっていたのです…。
そして、食事を終えて思ったのは、ソムリエが出してくださったワインの順番は的確だったということです。
ワインについて世の中で言われていることを頭で覚えただけの僕の知識と、その土地に生き、そこで働き、その中で身に付けた彼の経験とは、まるで違うのだと実感した出来事でした。
2つめは、ボルドー地方の小さな村にあるレストランでのこと。
このレストランのワインリストは電話帳のように分厚く、素晴らしいワインがたくさん載っていました。
そしてその中に、「グラスで飲む、ソムリエおすすめワイン」というメニューがありました。
お客さんが注文したお料理に合わせて、ソムリエが3種類、5種類、7種類のワインを選んでくださるというものです。
僕はその中から、3種類のおすすめワインをいただくことにしました。
そして、お料理の進み具合に合わせて、ソムリエが選んでくれた3種類のワインをいただきました。
ところが、どのワインもお料理には合うのですが、僕の好みには合わないものばかり…。
ワインがお料理に合うということと、自分の好みに合うということとは別なのだと、あらためて知った出来事でした。
3つめは、パリのレストランでのこと。
僕は、お料理とともにボルドー地方のワインを注文しました。
しばらくするとソムリエがテーブルまでワインを運んで来て、僕の目の前で栓を抜きました。
そして、ワインをグラスに注ぎ、彼が飲んだのです。
いままでにお邪魔したレストランでは、ソムリエがワインの栓を開けると、僕の前に置かれたグラスに注いでくださり、それを味見するように促されました。
しかし、このレストランでは、ソムリエがワインの味や香りを先に確認し、その後にお客さんに注いでくださるのです。
ワインのことを良く解っているソムリエが、味や香りを前もって確認してくださるという意味では、このようなサービスもありなのですね。
なお、その他にも、とても陽気なソムリエや、とびきり美味しい1本を勧めてくださった方、お店の格式やワインの値段にとらわれるべきではないことを教えてくださった方など、想い出に残るソムリエがたくさんいらっしゃいます。
これらのエピソードは、またの機会に…。