388 食べること飲むことを楽しむ
先日のコラムの中で、「次回は、レストランの楽しみ方やマナーについてお話したいと思います…」と書きました。
皆さまはそれをお読みになって、どんな内容をご想像なさいましたか。
「レストランでは○○するのがマナーです」とか、「○○するのはとても失礼にあたります」などということを、お考えになったかも知れません。
確かに、レストランでの立ち振る舞いやテーブルマナーと言えば、「○○せねばならぬ」とか、「○○してはならぬ」などということばかりが語られているように思います。
しかし僕が、今日、お伝えしたいこと。
それは、フランスにいらした時こそ、レストランでのひと時を、大いに楽しんでいただきたいということです。
僕はフランスに来て、昔ながらの大衆食堂から世界に名立たるレストランまで、いろいろなお店にお邪魔する機会がありました。
そしてその中で、レストランとは「食べることを楽しむ場所である」ということを、あらためて実感したのです。
もちろん、初めてパリに来てレストランに入った時や、初めて星付きのレストランに行った時には、少なからず緊張しました。
しかし、いろいろなお店にお邪魔して、楽しそうに食事をしているお客さん達の姿や、お店の方々の自然な(気さくな)対応にふれるうちに、そこには何も怖いことはない、増してや、気負わなければならないことや、こと細かに注意しなければならないことはないのだということが解りました。
マナーというのは確かに存在するのでしょうが、それはレストランでの食事の時に限ったことではありません。
電車や飛行機の中、ホテルや劇場など、周りにたくさんの人がいらっしゃる場所においてどう振る舞えば良いのかということと、少しも変わりはないのです。
パリは世界一の観光都市。
たくさんの国から、いろいろな方が訪れます。
また、たくさんの人種やいろいろな立場の方が、日々生活している街でもあります。
そんな中において、私達日本人は、世界で1番マナーが良いと言われる国民。
普段通りに振る舞っていれば、周りのお客さんやお店の方に対して、失礼にあたることはないと思います。
「エレガントに振る舞おう…」なんて気負ってみたり、「周りのお客さんやお店の方に見られているのでは…」なんて緊張なさることはないのです。
また、いわゆる良いレストランであればあるほど、細かなことは気にせずに、お店の方の案内(リード)にお任せすれば良いと思います。
彼らこそが真にその道のプロであり、またそのお店を日々運営し、今日まで維持して来たのですから。
どうか、フランスにいらっしゃった時こそ、ゆったりとしたお気持ちで、心ゆくまで食事のひと時を楽しんでください。
またその時には、逆に、周りのお客さん達を「チラッ」とご覧になってみてください。
皆さん、食べること、飲むことを本当に楽しんでいらっしゃいます。
この国、この街に住んで4年。
むしろ、日本にあるフランス料理のレストランで食事をしていた時の方が、ずっと緊張していたように思う、今日この頃です。
追伸、
ただし、ここパリでも、唯一、食事中に周りのお客さんの視線を気にしなければならない場所があります。
それは、日本食レストランに入った時。
パリジャン、パリジェンヌの中には、私達日本人の食事の仕方やお箸の持ち方、お料理を口にする順序などを、こと細かに観察(笑!)する方がいらっしゃいます。
どうか、日本好き、和食好きの彼らのことを、許してあげてくださいね。