315 小津映画をパリで観た
皆さまは、映画監督の小津 安二郎をご存知でしょうか?
フランスでは、日本を代表する映画監督として、黒澤 明監督と並んで有名なようです。
しかし日本では、若い世代の人たちにはあまり知られていないようにも思います。
現在、パリにある日本文化会館で、開館10周年を記念して36本もの小津映画が約1か月半に渡り上映されています。
そのうち、私が観たのは「東京の合唱」と「生まれてはみたものの」の2本。
小津映画を、初期(無声映画時代)、中期(モノクロ映画時代)、後期(カラー映画時代)に分けるとすると、いずれも初期に作られたものになります。
時代は1930年代初め、世界恐慌の影響で日本が不景気だった頃の、東京のサラリーマン家庭の話です。
その内容は第二次世界大戦前のことでありながら、あまりにも現代の社会に似ていて驚きました。
失業、いじめ、出世のためのゴマすりなど…。
切ない問題を描きながらもユーモアにあふれ、そして最後に心に残るのは、強く温かい家族の絆。
ハリウッド映画のようなドラマチックなストーリーではありませんが、日々の淡々とした生活の中のちょっとした出来事の積み重ねを描くこれらの映画の雰囲気は、どこかフランス映画にも通じるものがあるように思います。
フランス人が小津映画を好む理由が、少しだけ(何となく)解ったような気がしました。