269 パリでの再開
日本から友人がやって来ました。
彼は、以前同じ会社に勤めていた同い歳。
しかし、30歳を前にして会社を辞め、事業を起こして早10年。
現在では、従業員百数十名の会社の社長さんです。
彼とパリで会うのは今回が2度め。
再会して簡単な挨拶を済ませ…
「さて、どこへ行こうか?」
…と尋ねたら…
「モンマルトルに行ってみたいんだけど」
…という、ちょっと意外な答えが。
青年実業家を絵に描いたような彼だから、ちょっといいレストランにでも行って、豪華なお昼ご飯でも食べるのかな?と思っていたので、その飾らない一言を聞き、ちょっと嬉しかったのです。
メトロ(地下鉄)に乗ってモンマルトルへと向かい、まずは丘の麓にあるカフェでお昼ご飯を食べることに。
僕が薦めたのは、蕎麦粉を使ったクレープ。
日本でクレープと言えば、若い女の子が食べるお菓子のようなイメージがありますが、ここフランスでは立派な食事。
ハムとチーズ、そして半熟の目玉焼きが入ったクレープをいただきました。
また、サラダも食べたいという彼に薦めたのは、ニース風のサラダ。
レタスの他、アンショア(anchois:カタクチイワシの塩蔵品、アンチョビ)やツナ、オリーブ、トマトが入ったサラダです。
そして、ワインはボルドーの安物をピッチャーで。
何の気取りもなく、また、何の気兼ねもなく食べるご飯は、とても美味しいものでした。
ゆっくりとお昼ご飯を楽しんだ後は、急な階段を登って丘の上へ。
サクレクール寺院の前に立ち、早くも秋の風情漂うパリの街を眺めました。
そしてあらためて、こんなところで友人と再会していることの不思議さを実感したのです。
「パリに住んでいて、(外国人として)大変なことってないの?」
…と聞く彼に…
「もう~、毎日大変なことばかりだよ!」
…と答える僕。
日本にいたら何でもないことが、ここでは思い通りにならないからです。
別れ際、彼と力強い握手をして、元気と勇気をもらいました。
そしてまた、パリでの再開を約束して。