245 と、彼女は思った

飛行機は、午後5時30分にパリのシャルル ド ゴール空港に到着した。
日本での仕事をしばらく休みにして、これから約2か月間、彼女はパリに滞在する。

空港の建物から外に出た瞬間、彼女の全身は6月のパリの日差しに照らされた。
また、辺りには空港特有の匂いが漂っていて、パリに到着したことを強く感じさせた。

パリ市内へと向かうバスの停留所で待っていると、ほどなくバスが来た。
運転手から切符を買い、長い車体の中程の席に、彼女は座った。

バスは広い空港内にあるいくつものターミナルを経由して、それぞれの停留所で人を乗せた後、高速道路を通ってパリ市内へと向かった。

彼女は、ぼんやりと窓の外を眺めながら、これからの2か月間を、どのように過ごそうかと考えていた。
すでに幾度となくパリを訪れている彼女にとって、今回の滞在には何か明確な目的があるわけではなかった。

バスが大きな球技場の脇を過ぎた頃、モンマルトルの丘にそびえるサクレクール寺院が見えた。
そしていま、彼女を明るく照らしているのと同じ夏の日差しが、白いサクレクール寺院をより一層美しく輝かせていた。

その時、彼女は思った。
今回は、パリの街をたくさん歩こうと。
あのモンマルトルの丘も、シャン ド マルス公園やリュクサンブール公園も、そして、彼女がパリで最も好いているセーヌ河岸も。

またそのために、この街を歩くために、スニーカーを買おうとも。