239 愛しいフランス人

どの国でも、結局は人によるのだろうが、「フランス人ってどんな人?」と聞かれれば、私は「良くも悪くも感情をあらわにする人が多い」と答えるだろう。

ある寒い雨の日、こんなことがあった…。
暖房の効いたカフェでお茶を飲んでいると、お店から出て行ったお客さんが出入り口の扉を開け放したまま帰ってしまい、店内の温度が一気に下がってしまったのだ。
すると、出入り口付近にいた60代くらいのマダムが

「あぁ、なんてこと、開けたまま帰るなんて! 寒いじゃないのよ! あぁ、本当に信じられない!」

…と大げさに両手を頭にあてて、思いっきり怒っているのだ。

またある時、こんなこともあった…。
なかなか来ないバスを待っていたおじいさんが待ちくたびれて、諦めて歩き出したところにバスが到着。
すでにバス停から離れていた彼はバスに乗ることが出来ず、バスは無情にもその横を走り去ってしまう。
するとおじいさんはそのバスに向かって

「ずっと待っていたのに! 全くなんてことだ!」

…と、大声で怒鳴り始めたのだ。

それを見て、私は思わずクスッと笑ってしまった。
怒りの対象がなくなっても、こうして子供のように怒りを表すフランス人って、「人間らしいなぁ」と愛おしく思ってしまう。
見慣れてくると「あぁ、また始まったわ…」と思わず遠巻きに眺めてしまうけれど、でも、何度見ても「可愛いなぁ~」とも思ってしまう。
怒っている人に対して、そんな感情を抱いてしまう私って不謹慎かしら?
もちろん、人によるのだろうけれど、でもやっぱり、フランス人は感情をあらわにすることができる、可愛い人が多いと思うのです。