100 僕らを乗せて

僕は、今、1人でバスに乗っています。

フランス パリの街中を走る、29番の市バスです。
先ほど、中央郵便局の脇のバス停からこのバスに乗り、これからバスティーユの自宅に戻るところです。

金曜日の午前中、パリの街は思いのほか静かです。
道路も空いているし、道往く人の姿も、決して多くはありません。

また、バスに乗っているお客さんもまばらです。
僕の周りには、60歳くらいの女性と、20歳代と思しき女性がいるだけです。
そして皆、どこを見るでもなく、ただぼんやりと、窓の外を眺めています。

僕も、同じ。
窓の外を流れていくカフェやパン屋さんなどの街並みを、ただぼんやりと眺めています。
ただし、他のお客さんと恐らく異なるのは、今、この街に自分がいるということに、少しだけ違和感を持っていること…。
別な言い方をすれば、人生の不思議を感じているということです。

バスは僕らを乗せて、パリの街を走ります。
そして、時々バス停に止まっては、お客さんが乗ったり、降りたり…。

いろんな人がいる街、いろんな人がいてもいい街、パリ。
これが、普段の、この街の姿。

おっと、バスティーユのバス停が近づいて来ました。
僕は、ここで降りますね。
それでは、また。

あっ、そうそう、昨日の夜、雪が降ったんですよ!
ほんの短い間でしたが、とてもきれいな雪でした。