027 彼女にとってのパリ
夕方、相方(水野)とパリの街中を歩いていた時のこと…。
とあるアパートから、1人の女性が出ていらっしゃいました。
すでに、かなりお歳のご様子…。
杖を突いた、その小さなお身体から、そう察することが出来ました。
そして、彼女と私達とがすれ違う瞬間、彼女が日本人であることが判ったのです。
僕と相方が日本語で話をしながら歩いていたので、彼女も私達2人が日本人であることがお判りになったのでしょう。
すれ違いざまに、彼女は軽く、私達に会釈をしてくださったのです…。
真っ白な開襟シャツが印象的な、とても穏やかそうな女性でした…。
私達がアパートの前を通り過ぎ、そっと後を振り返ると、彼女は杖を突きながら、ゆっくりゆっくりと歩いて行かれました。
ほんの一瞬の出会いだったのですが、今になって思うと、何か言葉を交わすべきではなかったかと悔やまれてなりません。
彼女にとって、パリとは、どんな街なのでしょうか…。