002 印象日の出 受難日誌2/8

Copyright:坂田 正次

このコラムは、パリのセーヌ河と東京の隅田川の環境問題や河川軸を中心とする都市再開発などの相互啓発をしながら友好関係を築くことを目的に活動している「セーヌ河友好協会」からの寄稿です。
執筆は坂田正次が担当しています。
最初のテーマは、セーヌ河に関係の深い印象派絵画のお話です。

【1986年(昭和61年)11月25日】

午前08時20分頃、東京の有楽町 交通会館の三菱銀行有楽町支店に日本通運に委託されている現金輸送車が到着しました。
運転手が後部ドアを開けたところ、待ち伏せしていた3人組の強盗のうち2人が運転手に殴りかかり催涙スプレーをかけました。
このために運転手は身動きができなくなったのです。

現金輸送車にはもう1人の警備員がいたのだが、その警備員は銀行員へ現金輸送に関する書類を渡すために車から離れていたのです。
そのため無防備状態となった現金輸送車から犯人グループは、3億3,300万円入りのジュラルミンケース2個と有価証券4,000万円相当の入った麻袋1つを奪い、反対側に駐車していた白いワゴン車で逃走しました。
この日は給料日であったため、いつもより多くの現金を輸送していました。

逃走に使われた白いワゴン車は約50分後に犯行現場から500メートル離れた銀座6丁目の西銀座地下駐車場で発見されました。
しかし、空のジュラルミンケースと麻袋、外国製の仮装用のマスクとベージュのコート、白いヘルメットが見つかったものの現金は入っておらず、持ち去られた後でした。
警視庁の調べで、犯行に使われた白いワゴン車は港区の会社所有のもので21日の深夜に盗難されていたことが判明しました。

襲われた日本通運の警備員の証言によれば1人は170cm前後で白いヘルメットをかぶっていて、もう1人は赤いヘルメット、残る1人は覚えていないということです。
いずれもフルフェイスのマスクをしていたため人相も判らないということでした(三菱銀行有楽町支店3億円強奪事件)。

この事件は、一見その1年前に起きた印象派絵画盗難事件と関係あるとは誰も想像さえしなかったのですが、時は日本のバブル期。
投資先を絵画購入へと考えることが少なくなかったため、コローやモネの絵画を強奪し日本へ売り込もうとしたフランス人グループとその日本人仲間とのトラブルが原因となり起きた事件だったのです。