017 水上のアトリエ
Copyright:坂田 正次
日本の浮世絵と印象派画家たちの関係ことから、セーヌ河とは切ってもきれない仲のモネのことへお話をつないで行きたいと思います。
モネは水上のアトリエを持っていました。
小さな舟をセーヌの水に浮かべて、水辺の風景の創作をしたのです。
以前紹介しました、セーヌ河沿いの小さな街のアルジャントィユでの印象派が生まれる前の創作時代のことです。
アルジャントィユに別荘やボートを所有していたカイユボットに誘われて、モネは1871年からの8年間、そこに住みます。
ギュスタヴ カイユボットは、パリの高級アパルトマンに住む金持ちの青年画家でしたが、画家としての活動より、印象派の形成にその資金力で貢献した人物です。
そして、彼はライフワークとしてオルセー美術館にある膨大な印象派絵画コレクションの核を形成させているのです。
モネはアルジャントゥイユで、セーヌの水面やヨット、木々や大地を映し出す光を追いかけていました。
モネらしい光あふれる世界を見つけようとしたのです。
セーヌ河にアトリエ舟を浮かべ、何時間も水の流れと反射してくる光の色彩を観察し、画にする瞬間の光景をキャンバスに写し取りました。
アルジャントゥイユのモネのもとには、マネがおとずれ、「アトリエ舟で描くモネ」を描いています。
画のモネの表情は自身にあふれるように絵筆を持ち、傍らには妻のカミーユがモネを見守るように座っています。
アトリエ舟で描いた風景は、アルジャントイユのセーヌ河の流れの上から両岸を見た風景やヨットの浮かぶ情景など、モネのおなじみの作品です。
モネ自身も日本の屋形船にも似た屋根付きの自分のアトリエ舟を1枚描いています。
屋根付きなら、雨が降ってきても大丈夫なわけです。
印象派画家とセーヌ河との関係を追うとき、1番象徴的な様子を描いたのがマネの「アトリエ舟で描くモネ」かもしれません。
モネは病弱だった妻のカミーユを亡くした後、ジベルニーへと居を移します。
アトリエ舟で描くモネ マネ