003 ウジェーヌ ブーダン
Copyright:坂田 正次
セーヌ河の河口には、モネの師匠のウジェーヌ ブーダンがいます。
セーヌの河口を訪れたときに、私はその大きさにびっくりしています。
パリのサン ラザール駅から列車でル アーブルまで行き、バスに乗り継いで、オンフルールに行く途中、河口近くのセーヌをまたいで架かるノルマンディー橋(Pont de Normandie)を渡ったときの絶景は鮮明に記憶に焼き付いたままでいます。
セーヌの水面までの高さもブルってしまうほどあります。
ノルマンディー橋は1995年に開通し、長さは2,150mとかなり長いのですが、セーヌの河口はその6倍の約12kmというとんでもない大きさです。
上げ潮のときに海水が上流方向に押し寄せる海嘯がおきることがあるほどの規模をセーヌ河は持っているのです。
ノルマンディー橋を渡って、りんごを原料とするシードルを蒸留して造られる、かなり強いお酒の産地のカルバドス地方の独特の木造家屋が散在する中を通り、大航海時代の港の名残のあるオンフルールに着きました。
画家のブーダンはここで1824年に生まれています。
オンフルールの近くには緑の丘と海浜が広がり、ヴィレールヴィル、トゥルーヴィル、ドーヴィルなどの避暑地がつくられ、都会から人々が集まってきていました。
ブーダンもその様子を自分の絵画に取り入れています。
ウジェーヌ ブーダン(Eugene BOUDIN、1824~1898)は、船乗りの息子として生まれて、1850年にル アーブルの芸術家協会の奨学金を得て、3年間パリで学んでいます。
ブーダンのテーマは自然の風景で、特に海と空を強調した絵画を多く描きました。
モネとの出会いは1858年のことで、ル アーブルで似顔絵や風刺画を画材屋さんの店先に並べてもらっていた当時17歳のモネの絵を見て、モネを誘い、一緒に風景画を描くようになったのがきっかけです。
ブーダン、34歳のときでした。
オンフルールにはこのブーダンを記念して、エリック サティ広場にウジェーヌ ブーダン美術館(Musee Eugene Boudin)が建てられています。
オンフルールに行かれた際には是非寄ってみてください。
クールベ、モネ、デュフィーなどノルマンディーに滞在した画家の作品とともに、約60点のブーダンの作品を紹介しています。
ブーダンとの出会いの後、印象派の中心的存在となるモネは、色彩や自然への目を開かせてくれたブーダンに終生変わることのない感謝の念を持っていたと伝えられています。
トゥルーヴィルの浜 ブーダン