001 セーヌの源へ

Copyright:坂田 正次

セーヌ河を描いた画家には、「印象日の出」のモネをはじめとして、シスレー、ルノワール、セザンヌあるいはアンリ リヴィエールなどが存在しますが、その中には印象派の画家が多く含まれています。
今回からお送りするシリーズは、セーヌ河と印象派絵画、それに加えて印象派に大きな影響を与えた日本の浮世絵のことなどを追ってみたいと考えています。
第1回として、まずはセーヌ河の様子からご紹介してまいります。
私がセーヌ河に興味を持ち始めたのは、20年以上前のことなのですが、へそ曲がりの編集者がよく言う「パリのことはあまり出版したくないな」という言葉の内面にあるパリそしてセーヌ河への見方を私も持っていたことは確かでした。

それが変わりはじめたのがヨーロッパへの初めての旅行をし、その旅行の最終地のパリで本物のセーヌ河に接したとき、その流れのゆるやかさに安堵感のようなものを感じ、パリの歴史の中での役割の大きさなどを認識したときでした。

それまでにも、日本国内の河川とその流域に生活する人々との関係を追っていましたので、国際河川のライン川などとも違う性格をもち、パリや流域の都市と密着して流れてゆくセーヌ河を調べてゆくことを、旅行から帰ったあとしばらくして決めています。

数年後、水源地から河口へと向かうセーヌ河流域への旅を開始しました。
東京の鮫洲の運転免許試験場で、これで本当にフランスで運転できるのかしらんと思えたネズミ色のみすぼらしい大判の厚紙の国際運転免許証を交付してもらい、埼玉県桶川の本田運転訓練センターで左ハンドル車の運転訓練を受けて、Hertzレンタカーの予約をし、アンカレッジ経由の飛行機でパリに入りました。
アンカレッジでは今となっては懐かしいアラスカうどんを食しています。

パリから普通特急に乗ってレンタカーを予約してあるディジョンに行き、駅の近くの安宿に泊まりました。
この当時フランスの新幹線のTGVの開通1年ほど前であって、パリからディジョンまで3時間ほどかかったと記憶しています。

6月のフランスの緑色のゆるやかな曲線を描く大地が、気分よく車の窓を流れて行き、セーヌの水源地のあるラングル高原のタスロ山近くでは霧雨が静かに降っていました。
セーヌ河の水源となる雨です。
道に迷いそうになりながらたどり着いた水源地は公園として整備され、キャフェもあります。
ふわっとした水源地の様子は絵のようです。
ここから776kmの流れが始まるのです。

セーヌ川の源流
セーヌ河の源流