019 初秋に華やかで繊細なシラー

Copyright:モーセルヴェ 伊藤 歩

今年は例を見ない冷夏で夏を堪能する前に一気に秋に突入してしまった感がありますが、そこはポジティブな食いしん坊のわたし、秋のきのこに期待しましょう。

確か昨年はこの時期にコルナスを薦めましたが、今年も直感でひらめいたワインはサン ジョセフ(コルナスのすぐ北の地区)、なぜかこの時期シラー種が飲みたくなるようです。
ローヌ北部、ヴィエンヌとヴァランスのほぼ中間に位置し、ローヌ河右岸に分布する南北に細長い割と大きめの地区、急な斜面上にあり、南東の斜面が朝日をいっぱい受ける、ワイン栽培に理想的な畑です。

ローヌ北部の赤ワインはすべてシラー種が主体になるので、シラー種の復習をしましょう。
シラー種の特徴は濃いタンニン、カシスやブラックベリーの黒い濃厚な果実に、ローリエやすみれ、オリーヴの植物香がプラスされます。
しかし、毎回申し上げますが、いくら同じシラー種とはいえ各要素のさじ加減で印象というのはかなり変るものです。
ローヌ右岸の赤ワインの地区は、北からコート ロティ、サン ジョセフ、コルナスと南北に連なっているのですが、北のコート ロティはタンニンの粒子が細かくてデリケートなカシスの果実のうえにうっとりするすみれの香りがのっていて、エレガントで繊細な感じなのに対して、南のコルナスはタンニンが濃く、黒く濃厚な果実、土、獣の味わいに引っ張られ、ワイルドな感じに、同じ香り、味の要素を軸に印象ががらりと変ります。

さて、サン ジョセフはこの対極な性格を持つ2つの地区にはさまれているため、北のコート ロティに近い場合はすみれの香りが華やかで線が細めの繊細系、南のコルナスに近くなってくるとだんだん線が太くなって土っぽく、黒く、獣の荒々しさが出てきます。
このように同じ地区内でもスタイルの違いの幅が割りと大きいサン ジョセフ、飲んで自分のスタイルに合う作り手を見つけてみてください。

今回ご紹介するSaint Joseph 2002 Domaine Bernard Faurieは、すみれの香り高く繊細なタイプ。
ローヌ河左岸の最高峰、素晴らしいエルミタージュも生産することで有名なBernard Faurieですが、サン ジョセフの方はエルミタージュほど値が張らないので気楽に楽しめます。
色はすみれが液体になたようなしっとりした紫色、濃いものの色はクリア、香りは甘いカシスリキュール、葉巻、ブラックベリーのコンポート、レグリース(日本語で甘草、英語のリコリス)にうっとりするすみれの香り、乾燥ミント、ローリエ、タイムの植物香。
空気に触れさせていくとだんだんミネラルのきっちりした枠の硬さが見えてきます。
味わいは、タンニンが果実の中に溶けて、すみれをまとうとこんな感じでしょうか。
濃くても押し付けがましくなく、最後にのどを走りぬけるミントの爽快感の後味のきれいさでぶどうの質の良さが感じられます。
実は天候不順とローヌ河の氾濫で南部は散々、北部の出来も芳しくない2002年のローヌ地方のワインですが、きれいなぶどうを使って普通に作るとこんな感じなのよ、という声が聞こえてきそうに伸びやかな出来。
お見事です。

最高のマリアージュはカレ ダニョー(Carre d'Agneau)のローストでしょう。
タイムとにんにくをまぶして、ズッキーニが添えられていればパーフェクト。
ローストは最初に肉に焼き色だけつければあとはオーブンが仕事してくれますから和食を作るよりかなりラクです。
仔羊の肉汁とシラー、イメージするとほら試したくなるでしょう?
ワインのお値段は13.50ユーロ。
ゴージャスで家計にもやさしい晩餐いかがですか?