009 美味しいシュナン種の白に開眼

Copyright:モーセルヴェ 伊藤 歩

今回は以前からご紹介したかったロワール地方の、とっておきの白の話をしましょう。

【ロワールの白ワイン、シュナン種】

コトー デュ ロワール(Coteaux du Loir)はロワール地方のトゥーレーヌ地区にあり、町で言うとトゥールの北に位置します。
知名度はないものの、赤、ロゼ、白ワインを産出し、特に白ワインは実の詰まった長熟タイプの質の高いものができることで私自身注目している地区です。

白ワインの品種はシュナンブラン種100%。
この品種はオレンジのようなきれいな酸とりんご、蜜の香りが特徴。
私が1番最初に修行した店のオーナーはジャニエール(Jasnieres:同じくシュナンブラン種100%の白ワインが産出される地区)から来た方だったので来る日も来る日もこの品種のワインを飲みまくり、徹底的に香りの特徴を覚えたことがありました。
おかげさまで今ではブラインドでシュナン探知機のように。

香りは捉えやすいですが、さらりとしたもの、酸味が立つもの、甘みを強く感じるもの、と口に含んだ感じはさまざまですから、ひとくくりにせず、ひとつずつ飲んで覚えていくことが大事です。
そう、シュナンは奥が深いのです。

【りんご風味の蜂蜜レモン】

今回のワインはCoteaux du Loir 2002 Domaine de Belliviere、Eric Nicolas夫妻の小さなドメーヌのワインです。
50年から80年の樹齢の高いぶどうによるというキュヴェもパワフルで魅力的ですが、このキュヴェはそれよりももう少し若い樹齢のぶどうを使用。
ワインが上手く土壌を表現できるようにと考えた結果、90年代半ばよりストイックなまでに自然な作りにこだわってきた作り手です(無農薬、無添加)。

色はきれいな藁(わら)色。
涙の状態からも濃度の高さがうかがえます。
香りはこれぞシュナン! な蜜と完熟りんごの香りに柑橘のさわやかな香り、りんご風味の蜂蜜レモンとでも言いましょうか、これに青海苔のようなミネラルの香りもうかがえます。

このワインは香りの要素が細かい上にぎっしり固めですからキャラフェしてゆっくり香りをほぐしてあげてください。
口に含めばさらりとした酸が口いっぱいにちりばめられ、最後にすっきりしたミント香、後味はふんわり蜂蜜レモン。
食べ物との相性は、海苔の香りがするからでしょうか、私はどうもかんぴょう巻きとか太巻きなどが食べたくなります。
今、手元にないのですが、絶対合うはず。
ココナッツミルクとの相性もいいので、辛さを控えたタイカレーなども良いでしょう。

以前、白ワインは苦手、と言っていた男性によく話を聞いてみると、どうも酸っぱい水のように白ワインを捉えていらっしゃるようなので鼻を膨らませて「そんなことはない」とこのワインを飲んでいただいて「参りました」と1件落着したワインです。

余談ですが、彼のロゼワインはロゼ嫌いの私が唸って3回も買いに行ってしまった絶品。
そのチャーミングないちごジュース的な味わいに今度は私が「参りました」。