パリで生きる僕の感情表現 メルシー編

487 抱きついてチューする?

僕はこの国に住んで6年半になりますが、いまだにフランス語を満足に話すことができません…(こんなこと、恥ずかしくて大きな声では申せませんが…)。

以前は、最低限のフランス語だけは身につけようと、パリ市が主催するフランス語講座に通ったこともありましたが、フランス語を話すことができなくても、どうにかこうにか生きていくことはできるので、ついつい勉強が疎かになってしまいました。

ところが先日、「ああっ、こんな時、フランス語が話せたら…」と切実に思う出来事がありました。

それは、フランスのブルゴーニュ地方にある、いくつかのワインの蔵元を訪ねた時のこと。

予め電子メールで訪問の希望を伝え、先方のご了解を得ることができたのですが、しかしそれ故に、春先のお忙しいこの時期に、僕のためだけにスケジュールを空けてくださることになったのです。

そして、あちらこちらのぶどう畑を案内してくださったり、ぶどう作りについて丁寧にお話してくださったり、大切なワインをあれこれ試飲させてくださったりと(中にはレストランでの食事まで用意してくださった蔵元も…)、心からのおもてなしを受けました。

そしてその時、彼らのおもてなしに対する嬉しい気持ちや感謝の心、感激したことなどを伝えたいと思ったのですが、まったく言葉が出てきませんでした…。
ただ、メルシー(Merci:ありがとう)という言葉を繰り返すばかり…(ああ我ながら、本当に情けなかった…)。

喜怒哀楽をはじめとする人間のさまざまな感情を表現する時、言葉の他にも表情やしぐさ、声などを交えますが、喜びや感謝の気持ちほど相手に伝えにくいものはないのではないか、やはりきちんと言葉にする必要があるのではないか、と痛感しました。

いくら嬉しくても、ワインの蔵元のご主人に抱きついて、チューするわけにはいきませんからね…。