485 ない! ない! ない!

先日、私は凪さんと一緒に、パリ郊外にあるおもちゃの展示館「プレイモービル ファンパーク」に遊びに行きました。

ここは、車で出かけるような場所(ちょっと不便な場所)なのですが、電車とバスを乗り継いで行くこともできます。

おもちゃの展示館までは、ちょっとした遠足気分。
凪さんとは、車中、おやつを食べたり歌を歌ったりと、楽しく過ごしていました。

そして、展示館に到着し、その広さとおもちゃの多さとに大興奮。
凪さんは、さっそく程良い場所を見つけて遊び始めました。

一方、私は、夕方に会う約束をしていたお友達に電話をかけようと、バッグの中の携帯電話を探しました。

ところが、ないのです! 携帯電話が!
先ほど電車の中で使ったばかりなのに、バッグの中にも、コートのポケットにも、凪さんのベビーカーの中にもありません。

あわてた私は、楽しそうに遊んでいた凪さんを抱きかかえ、展示館の中を歩いて探しました。

どうしよう、どうしよう、どうしよう…。

まず、展示館の係りの人に事情を説明し、落し物として届いていないかを確認(しかし、ない)。

また、今後届けられた場合を考えて、携帯電話の絵と私の連絡先を書いたメモを渡しました。

さらに…

「すみません、自分の携帯電話に電話をかけてみたいのですが、お電話を貸していただけませんか?」

…とお願いしてみましたが、係りの人には断られてしまいました。
お友達には昼頃に連絡すると言っておきながら、この時点でお昼はとっくに過ぎてしまい、ますます気持ちが焦ってきました。

どうしたらいいのか考えが定まらず、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり…。
そして、たまたま近くにいらした女性にお願いしてみました。

「すみません、ここで携帯電話を失くしてしまったんです。自分の電話番号に電話をかけてみたいので、あなたの携帯電話を貸していただけませんか?」

初めは怪訝そうな顔をしていたその女性も、私の慌てぶりに同情してくださったのか、快く電話を貸してくださいました。
そして、私の電話番号にかけてもらい、どこかでその呼び出し音が鳴っていないかと、耳をそばだてながら館内を歩き廻ります。

しかし、いっこうに聞こえません…。

すると、電話を貸してくださった女性が、私を手招きしました。

「誰かが、電話にでてくれたわよ」

「えー!?」

急いで電話を耳に押し当て…

「すみません、私、その携帯電話を失くしたんです。あなたはどこにいるのですか?」

「????????」(いやぁ、もう何言ってるのか全然聞き取れない…)

知らない人が話すフランス語を、電話を通じて理解することは、今の私には難しいこと。
しかも気が動転していて、うまく話すこともできません。

さらに、今日、初めて来た場所にいるので、自分がどこにいるのかうまく説明することもできないし、電話の相手がいる地名も聞いたことがない…。

もう、ギブアップ。

電話を貸してくださった女性に替わってもらって、私の代わりに話を聞いていただくことにしました。
そして話が終わると、持っていた紙にメモを書いてくださいました。

「Lundi apres-midi, Commissariat de Palaiseau, Mme.xxxxx, 06 45 46 xx xx」
(月曜 午後、パレゾー警察署、拾ってくれた女性の名前、電話番号)

私が携帯電話を失くしたのは電車の中だった様で、それを拾ってくださった女性は、月曜日の午後に、最寄りの警察署(パレゾー警察署)に携帯電話を届けてくださることになったのです。
そして私は、彼女が携帯電話を届けてくれたことを確認したら、その警察署に行って受け取ることになりました。

携帯電話のある場所がわかってホッとしましたが、しかし、いつもドンデン返しが待っているフランスですから、この手に携帯電話が戻って来るまでは、本当に安心することは出来ません。

ちなみに、携帯電話を過去に2度失くしたことがある友人は、すぐに気がついて自分の電話番号にかけてみても、つながらなかったと言っていました。
携帯電話の中のチップ(SIMカード)を入れ替えると自分のものとして使うことができるため、人気のある、新しい機種などの場合には、そのまま使われてしまうのだとか…。

一方、私の携帯電話は6年も前のもの。
しかも、当時で1番安かった機種なので、いまさらそれを使いたいと思う人もいなかったのでしょう。
お陰で、親切な方に拾ってもらうことができました。

「そろそろ、買い替えようかな?」と思っていた携帯電話ですが、無事に戻ってきたら、もう少し使ってあげたいと思います。

おっと、その前に、一刻も早く友達に連絡しなければ…。