フランスのパリで自分の子供が生まれるなんて

393 見たことのない顔

その日、僕は夢を見た。
高校生くらいの女の子が、畳の上に足を投げ出して座っていた。
そしてその女の子が、なぜか僕と相方(水野)の子供だという…。

朝5時頃に目が覚めると、相方がお腹の調子が変だという。
5分おきに、30秒ほどの痛みが走るとのこと…。
午前中いっぱい自宅で様子を見ていたが、病院に電話をかけたら「いつでも、いらっしゃい」とのお返事。

荷物を持ち、2人で、歩いて病院へ。
ここ数日、パリは暖かい日が続いていたが、今日はとても寒い。
しかし、空はぬけるように青く、それが、とても印象的だった。
相方は、時おりくる痛みに堪えながら、ゆっくりと歩く。

病院に着いたら、早速、検査室へ。
そして用意が整い次第、分娩室に移ることになった。

ここはパリの14区にある、マタニテ ポール ロワイヤル病院(Maternite Port Royal)。
公立の産院で、パリの中では最も大きな施設の1つ。

分娩室に入ると、担当してくださる先生や看護婦さん達が待っていてくださった。
先生は小柄で、まだ年の若そうな女医さん。
また看護婦さん達も、皆、若そうな女性ばかり。
忙しそうに動き廻りながらも、何度も相方に声をかけてくださる。

そして、すべての準備が整うと、このまま様子を見ましょうということに。
相方と僕だけが分娩室の中に残り、先生や看護婦さん達は、外へ出ていった。

出産までの約2時間、とても静かな時間が流れる…。
相方は麻酔の効き目もあってか、ベッドの上でとてもリラックスした表情。
久しぶりに、のんびりと2人で話をする。
また記念にと、何枚か写真を撮る。
「もっと可愛く撮ってよ!」という相方に、思わず笑ってしまう。

そして、いよいよ。
先生や看護婦さん達が上手にリードしてくださって、相方はとても安心した様子。
僕はただ、その傍らに立ってオロオロするばかり…。

しかし僕の心配をよそに、あっけなく、ポンッ!と産まれた。
先生や看護婦さん達に「よく頑張ったわね!」と褒められ、産まれたばかりの女の子を胸に抱かせてもらう相方。

その瞬間、相方は、僕がいままでに見たことのない、お母さんの顔になっていた。

マタニテ ポール ロワイヤル病院(Maternite Port Royal)