390 切っても切れない生地?

先日、パリで開催された、とある展示会に出かけた時のこと。
以前からお世話になっている手芸用品の会社の展示スペースにお邪魔して、品物を見せていただきました。

その中で目を惹かれたのが、上品な色や柄の生地。
美しい小花がモチーフになった、フランスのアンティーク風の生地でした。
私達2人は、パリやフランス各地で開かれる骨董市や蚤の市に時々出かけますが、そこで見かけるアンティークの生地にそっくりだったのです。

見本帳にくくられた美しい生地を1枚1枚見ていたら…

「どう、これ、いいでしょ? フルールドクールさんでも扱いませんか?」

…と、勧めてくださる担当者。

確かに、これだけ美しく、そして雰囲気の良い生地ならば、日本の皆さまにも喜んでいただけるものと思いました。

ところが、生地の端を見てみたら、何と「Made in Japan(日本製)」の文字が!
また、見本帳の台紙には、カタカナで「フレンチ アンティーク」と記されていました。

この生地をお作りになった日本のメーカーさんは、フランスのアンティークの生地を実際に手にされて、それを参考にしながらお作りになったのでしょう。

本場フランスの、手芸用品の会社の方が、「これは素晴らしい!」とおっしゃるほどの出来映えなのですから、本当に凄いのです。

「ねっ? どう、これ、いいでしょ?」

「えっ、ええ…、はい…、確かに…」

「ねっ? どう?」

「ええ…、はい…、でも…、これ…、日本製ですから…」

また先日、日本の、とある手芸用品店さんのカタログを拝見していた時のこと。
パラパラとページをめくっていたら、可愛らしい小花がモチーフになった生地が紹介されていました。
有名な、英国リバティ(LIBERTY)社のリパティ プリントです。

ところが、生地の端には、「Printed in Japan(日本国内で印刷)」の文字が!

数年前、イギリスのロンドンに行った時、リバティのお店にお邪魔して、歴史ある建物や山と積まれた美しい生地を見て感激したものですが、現在は、日本で作られているリバティ プリントもあるのですね。

さらに、英国リバティ社の創業当時の様子について調べてみたら、もともとは、日本や東洋の生地や装飾品などを輸入して売っていたお店とのこと。
しかも、1874年の創業当時から、日本人の少年(?)を雇っていたとも記されていました(何で日本の少年が、100年以上も前にイギリスで…?)。

フランスやイギリスの生地と言えば、長い歴史の中でその美しさが受け継がれて来たように思っていましたが、現在は、日本とは切っても切れない関係にあるようです。