フランス文化 スペクタクルをパリで観る

382 ここが本場

皆さまは、スペクタクル(spectacle)という言葉をご存知でしょうか。
辞書を引くと、以下のように記されています。

  1. 壮大な光景、情景
  2. 映画や演劇などの豪華で壮大な見せ場。また、そういう見せ場のある作品。

ここパリでは、友人や知人と話をする中で、「最近、何か面白いものを観た?」と聞く時に、このスペクタクルという言葉を用います。
オペラやバレエ、お芝居など、何か素晴らしいものを観ましたか?という問いかけなのです。

僕の中で、日本にいた頃とフランスに来てからとで大きく変わったことの1つに、スペクタクルを観ることがあります。

東京にいた頃にも、時々クラシックのコンサートなどに出かけることはありましたが、オペラやバレエ、お芝居などは観たことがありませんでした。
もちろん、それらの催し物が行われていることは知ってはいましたが、別の世界のもののように感じていたのです。

しかしパリに来てからは、相方(水野)の勧めもあり、バレエやお芝居などを観るようになりました。
そしていまでは、それがとても身近な楽しみの1つになっています。

中でも、パリオペラ座のバレエは、毎回観るのがとても楽しみです。
バレエのことなどまるで解ってはいない僕ですが、バレリーナの動きの美しさや、舞台手前で演奏するオーケストラの音の素晴らしさ、そして舞台装飾の艶やかさなど、感激のあまり、全身に鳥肌が立つことも少なくありません。

シルヴィ ギエム(Sylvie GUILLEM)のダンスを観た時には、光と影の演出に腰を抜かし、また、彼女の踊りを目の当たりにして、そこで踊っているのが同じ人間だとは思えない、この世で初めて見る美しい物体のように思えたものでした。
(しかも、彼女は僕と同い年!)

モーリス ベジャール(Maurice BEJART)の振り付けによるバレエを観た時には、バレエの幅の広さに驚きました。
また、客席で観る側と、ステージで演じる側との不思議な一体感や、観客が総立ちになるほどの興奮を味わったのも、この時でした。
(もう、本当に凄かった!)

サラ バラス(Sara BARAS)のフラメンコでは、赤と黒の色の組み合せの素晴らしさに、いままでの価値観があっさりと崩れ去りました。
(僕は、赤と黒の組み合わせが、あまり好きではなかったので…)
また、「シュッ!」と空気を切る音が聞こえるほどの速さで身体を回転させ、目にも留まらぬ速さで踏むステップ…。
到底、人間わざとは思えませんでした。

なお、これらのスペクタクルを観ていつも思うのは、人間は、本当に美しいということ。
そして、パリは、凄いということです。

もちろん、人間も、パリも、美しさと醜さ、凄さと酷さの両方を持ち合わせているものと思いますが、本当に素晴らしいスペクタクルを観た時には、その美しさと凄さに感動せずにはいられません。

また、パリで観るものだけが本物だとは思いませんが、しかし、ここが本場であるということは感じます。
客席で観る側にも、また、ステージで演じる側にも、ここが芸術の本場パリだという意識や緊張感のようなものがあるからかも知れません。