195 季節の音

フランスで暮らすようになってから気が付いたことの1つに、街に流れる商業音楽の少なさがあります。
特に、この時期はそのことをとても感じます。

そう、いわゆるクリスマス ソングを街中で聞いたことがないのです。
それだけでなく、テレビやラジオからもクリスマスソングが流れてこないのです。

以前、某ラジオ局の依頼を受けて、パリの街を往くさまざまな年齢のパリジャン&パリジェンヌに、「あなたの好きなクリスマス ソングは?」という質問をしたことがありました。
その結果、約8割の人が「プチ パパノエル(Petit papa Noel)」と答えたのには驚きました。

「プチ パパノエル」とは、フランスの幼稚園などでクリスマスの時期になると子供達が歌う童謡です。
その歌詞は…

僕の大好きなパパノエル(サンタクロース)
たくさんのおもちゃと一緒に空から降りてくる時には
どうか僕への靴のプレゼントも忘れないで

…というもの。
なぜ靴なのかしら?という疑問はさておき、フランス人なら誰でも知っている歌なのです。

他に出てきた歌のタイトルもほとんどが童謡。
少し耳を疑いました。

確かに、CDショップに足を運んでもクリスマス(ノエル)という言葉がキーワードになっているフランス人アーティストの新作CDを見たことがありません。
フランスに来たばかりの頃には何となく物足りなさを感じていましたが、慣れてしまえばそれも悪くないような気がします。

なぜならば、毎日の暮らしの中にある、この時期ならではの音に気付くことが出来るから。
マルシェ(朝市)に行けば…

「おいしい牡蠣があるよ! ホタテもどうぞ!」

…というおじさんの元気な声がかかり、また、その手元からはテンポよく殻をあける音が聞こえます。

また、街中のデコレーションに興奮して子供達が上げる歓声や、往き交う人々が交わす年末の挨拶、頬に交わすキスの音など。
教会の重たい扉を開くと、無料のクラシック コンサートに遭遇するなんていうことも…。

そんな、季節の音に触れると、気持ちが華やぎます。
Bonne fete de Noel(楽しいクリスマスを)!

プチ パパノエル(Petit papa Noel)