ロワール、Anjouの赤ワイン
Anjouはフランス最長のロワール河の左岸、Angersの南東に位置する地区です。
白ワインの品種は前回紹介したChenin Blanc、赤ワインはほとんどがCabernet Franc種を使用して作られます。
Cabernet Franc種はボルドーでおなじみのCabernet Sauvignon種の弟分にあたり、早熟で、暑さを嫌い冷涼な土壌を好む品種です。
ボルドーからもたらされたこの品種ですが、この地で単一で使用することによって他にはないロワールの赤ワインとしての個性を発揮します。
濃さは様々ですが、カシス、ブラックベリーの熟した黒いフルーツの香りと忘れてはならないポイント、ピーマンの香り、しっかりとした酸味とちょっと粉っぽいタンニンが特徴です。
AnjouのCabernet Francはのど越し、品がよくそれなりに飲み応えもあって食を選ばない、そんな気立てのよさを愛していたのですが、Cabernet FrancばかりがAnjouではないと思わせるワイン登場です。
Anjou 2004 Domaine A&R Mosse
ぶっ飛ぶほどにパワフルな白を作る彼らのAnjouの赤を“2004年なんてさぞや涼しげなんでしょうね”と何気に手にとった私。
そこで販売員がつぶやくのです、
「ああCabernet Sauvignonですね」と。
「Cabernet Francではないのですか?」
と何言っちゃってるのばりに聞き返すと彼は断言して
「普通はCabernet Francですが、これはCabernet Sauvignonなのです」
失礼しました。知ったかぶりしてはダメねと帰路について早速テイスティング。
色は濃い目の青みがかった鮮やかな紫色、香りはカカオ、干しプルーン、ブルーベリー、カシスの黒いフルーツにAnjouらしい漢方薬、グローブやペッパーのピリピリ、苔、赤ピーマンの煮詰めた香り。
口に含めばとろりとしたブラックベリーの果実味にピンと柱になる酸、レグリスのひねた香りとがっちりしたミネラル、わさびのような爽快感も。
後味の酸味も心地よく、飲みあきせずにスルリと2杯目に手が伸びます。
全体的な黒さと骨太さはなるほどCabernet Sauvignon、とはいえやはり香りのベースは私の知っているCabernet Franc種を使用したAnjouの香り。
以前、あるバイヤーと話していたのですが、ブルゴーニュにはアルザスの品種を植えたとしてもやはり出来たワインはブルゴーニュの香りがするだろう、と。
このワインも然り、品種を超えて香ってくる土壌の個性がほかの地でコピーできないフランスワインの魅力ではないでしょうか。
そしてそんな土壌を活かしきっている作り手に会うと人もまた土壌を表現する媒体なんだなあ、と思うのです。
フランスの豊かな土壌に感謝。
料理との相性ですが、私は復活祭なこともあり、仔牛のカツレツとあわせてみました。
黄金色に揚がった衣のコクと上質の仔牛の旨みに邪魔しない果実味と酸がなかなかの好相性。
和食ならば牛肉ごぼうがおすすめ。
Anjouの土っぽさがごぼうを引き立てます。
お試しあれ。
このコラムは、在仏日本人会発行の会員向け新聞に掲載された記事を、許可をいただいて転載しています。
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