019 ジベルニー モネのレシピ

Copyright:坂田 正次

ジベルニーでのモネの食生活は、フランス人らしい食通な面をよく表しています。
食事にも精力を投入し、創作活動に望んだのです。
妻のアリスとモネ自身も料理に使った厨房のあるダイニングルームは、当時のままジベルニーの家に再現されています。

クロムイエローの椅子や同じ色のランプシェード、そして薄い黄色の壁と黄色を基調とした強烈な印象を受ける食卓で、モネの家族たちはどんなメニューの食事をしていたのでしょうか。
また、来客のためにどんなご馳走を用意したのでしょうか。
美術よりそちらのほうに興味があるという方も多いかもしれません。

それを知ることができる貴重な資料がモネの家に残されていました。
クロード モネのレシピノートがそれです。
ノートが発見された後、a la Table de Monet(モネの食卓)というタイトルにより、その内容をまとめた本が2000年にフランスで出版されました。
腕の良いカメラマンによる挿入写真による編集は名著と評されています。
邦訳も東京などでマルモッタン美術館展が開催された年の2004年2月に上梓されています。

その目次には…

…といった文字が美味しそうに踊っています。

レシピの中には、「カワカマスの白バターソース」を見つけることができます。
川カマスは、仏語ではブロシェ(Broshet)と言い、食欲の旺盛な淡水魚で白身の引き締まった魚肉は美味です。
ブロシェは、セーヌの水が清冽だったときの食材です。
当時、モネは庭師が釣り上げたブロシェに大金を支払ったと言います。
現在のジベルニーの地ではモネの食卓を賑わしたブロシェは、セーヌ河やエプト川から手に入れることはできません。
モネのレシピには、100年前の様子が記録されているのです。

人生の幸福感は、豊かな食事の世界からも生まれてきます。
モネはようやく見つけることのできた安住の地のジベルニーで、睡蓮などの絵画を思い存分に描ける幸福感とともに、野生の動植物が生き生きと動き回る近くの野原や森から、きのこやハーブそして鳥獣なども手に入れて豊かな食生活を送ってもいたのです。

睡蓮 モネ
睡蓮 モネ